CYCLING / HEALTH / DR. IRUKA
ロードバイクで100km走る補給計画|糖質・水分を「1時間あたり」で考える
初めて100kmへ挑戦するとき、「おにぎりを何個持てばよいか」「水は何本必要か」と迷う方は多いでしょう。
しかし、補給計画は距離だけでは決められません。同じ100kmでも、4時間で走る人と8時間かかる人では必要な回数が違います。気温、坂、体格、発汗量、強度、胃腸の強さでも変わります。
そこで、まずは次の順番で考えます。
- 休憩を含む所要時間を見積もる
- 1時間あたりの糖質量を決める
- 飲める量と汗の量を練習で確かめる
- 何を、いつ食べるかまで予定する
- 当日に初めて使う食品を減らす
100kmでは「距離」より「時間」で補給を決める
長時間運動中の糖質補給について、スポーツ栄養の文献では、運動時間と強度に応じておおむね1時間あたり30〜60g、さらに長時間・高強度では条件を満たせばより多い量が検討されています。
ただし、これは全員が最初から60gや90gを取るべきという意味ではありません。高い摂取量は胃腸で処理できること、複数種類の糖質を使うこと、練習で慣らしていることなどが前提になります。
初めて100kmに挑む人は、まず普段の練習で1時間あたり30g程度から試し、空腹、力の出方、胃もたれ、吐き気、腹痛などを見ながら調整するほうが現実的です。
所要5時間の場合の考え方
例えば、休憩を含めて100kmに5時間かかると想定します。
- 糖質30g/時間なら合計150g
- 糖質40g/時間なら合計200g
- 糖質60g/時間なら合計300g
この量を一度に食べるのではなく、走行中に分けて取ります。
例として、糖質40g/時間を目標にするなら、30分ごとに約20gずつ取る方法があります。商品ごとの糖質量は異なるので、パッケージの栄養成分表示を確認します。
食品の組み合わせ例
- バナナ
- 小さめのおにぎり
- 羊羹
- エネルギーバー
- ジェル
- 糖質を含むスポーツドリンク
- コンビニで入手しやすく、普段から食べ慣れている食品
固形物だけ、ジェルだけと決める必要はありません。噛みやすさ、携帯性、気温、胃腸の状態に合わせて組み合わせます。
空腹になってからでは遅れやすい
長時間のライドでは、「お腹が空いたら食べる」だけだと、摂取が後回しになりがちです。登り、交通状況、同行者との会話などで、気づいたときには長時間食べていないことがあります。
最初の補給を早めに設定し、その後は30〜45分ごとなど、思い出せる間隔で確認します。サイクルコンピューターやスマートフォンの通知を使ってもよいでしょう。
大切なのは、時計どおりに無理やり食べることではありません。胃が受け付けない、吐き気がある、腹部が張るなどの変化があれば、ペース、量、食品の種類、休憩を調整します。
水分量は固定せず、発汗量を確かめる
水分についても「必ず1時間に何mL」と一律には決められません。汗の量は、気温、湿度、強度、体格、服装、暑さへの慣れなどで大きく変わります。
一つの方法は、練習前後の体重から発汗量を見積もることです。
推定発汗量 = 運動前体重 − 運動後体重
+ 飲んだ量 − 尿量
体重1kgの減少を、おおよそ水分1Lとして考えます。ただし、家庭での測定は誤差を含みます。1回だけで決めず、暑い日、涼しい日、強度の違う日で記録します。
日本スポーツ協会は、暑熱環境での水分補給について、運動による体重減少が2%を超えないことを一つの目安としています。一方で、汗の量を大きく上回る過剰な水分摂取も避けなければなりません。
「喉が渇いてはいけない」と大量に飲み続けるのではなく、自分の発汗、喉の渇き、尿、胃の状態、気象条件を組み合わせて調整します。
塩分は汗と条件に合わせる
長時間の発汗では水分だけでなくナトリウムも失われます。ただし、汗に含まれるナトリウム濃度には個人差があります。
暑い日、汗を大量にかく人、ウェアに白い塩の跡が残る人、長時間走る場合などは、食事、スポーツドリンク、補給食などからのナトリウム補給も検討します。
塩分だけを多く取れば安全になるわけではありません。高血圧、腎臓病、心臓病などがある方や、食事・水分に制限がある方は、一般的な補給例をそのまま使わず主治医へ相談してください。
本番前に「胃腸の練習」をする
補給計画は紙の上で完成しても、走行中に食べられなければ機能しません。
本番前の練習では、次の点を試します。
- 1時間あたり何gの糖質なら無理なく取れるか
- 固形物、ジェル、飲料のどれが合うか
- 強度が上がったときにも食べられるか
- 暑い日と涼しい日で飲める量がどう変わるか
- 何時間目から甘い物を受け付けにくくなるか
- コンビニで追加購入する場合、何を選べるか
「本番用の特別な補給食」を初めて使うより、短いライドで何度か試しておくほうが安心です。
前日と朝食も補給計画に含める
走行中だけで帳尻を合わせようとすると、胃腸への負担が大きくなります。
前日は普段どおりの食事を基本にし、極端な食べ過ぎ、飲酒、食べ慣れない物を避けます。当日の朝食は出発時刻から逆算し、炭水化物を中心に、普段食べ慣れた物を選びます。
朝食を取れないほど早い出発なら、前夜、起床後、移動中、走り始めてからを分けて考えます。睡眠時間を削って豪華な朝食を用意するより、睡眠と摂取可能な食品を両立させることが重要です。
100km補給計画テンプレート
走る前に、次の項目を書き出します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 予想所要時間 | 休憩込み5時間30分 |
| 最初の補給 | 出発30分後 |
| 糖質の開始目標 | 30〜40g/時間から試す |
| 持参する食品 | おにぎり、羊羹、ジェル、飲料 |
| 給水・購入地点 | 35km、65km、85km |
| 天候で変えること | 暑ければ給水地点を追加 |
| 胃腸不調時 | ペースを落とし、少量ずつ再評価 |
| 中止・短縮条件 | 強い症状、補給不能、安全な帰宅が難しい場合 |
まとめ:最適な補給量は練習で見つける
100kmの補給計画は、「正解の食品を買うこと」ではありません。
- 距離ではなく時間で考える
- 糖質は1時間あたりで計画する
- 水分は発汗と気象条件に合わせる
- 一度にまとめず、早めから分けて取る
- 本番前に胃腸と補給方法を試す
- 補給できない状態や強い症状では、安全を優先する
私自身も、運動習慣がなく肥満の状態から距離を延ばす過程で、補給の失敗を繰り返しました。必要だったのは、根性で空腹や疲労を押し切ることではなく、早い段階から小さく補う仕組みでした。
書籍『医師が実践した「疲労を管理する」ロングライド術』では、補給だけでなく、睡眠、ペース配分、ペダリング、痛みへの備えを一つの疲労管理として整理しています。
参考資料
- Jeukendrup AE. Carbohydrates for training and competition. Journal of Sports Sciences. 2011. https://doi.org/10.1080/02640414.2011.585473
- Sawka MN, et al. American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2007. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17277604/
- Vitale K, Getzin A. Nutrition and Supplement Update for the Endurance Athlete. Nutrients. 2019. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6628334/
- 日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防」 https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html
- 日本スポーツ協会「熱中症予防5ヶ条」 https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid917.html
本記事は一般的な情報提供を目的としています。持病、服薬、食事・水分制限がある方、運動中の症状がある方は、主治医などの医療専門職へご相談ください。